「ユグドラジルの覇者」 著者 桂木 希


ユグドラジルの覇者


第26回横溝正史ミステリ大賞、大賞受賞作品。現在よりちょっと先の未来において、世界を舞台としたインターネットと経済戦争を描いたミステリー小説。


ミステリー小説と言えば探偵モノだったり殺人モノだったりするのが定番だが、この作品はインターネットの電子商取引に注目し、インターネットの世界と電子商取引による株式市場や先物市場など経済を舞台としたミステリーなので、変わったところに着目する作品だな〜、と思った。

なかなか読み応えがある作品。登場人物がなかなかに魅力的であるし、先の展開が全く読めなくて、これからどうなるんだろう、とワクワクさせられた。インターネットや経済の知識があった方が面白いとは思うが、その辺りも難しくは表現していないので、そんなに取っ掛かりにくいってほどでもない。ただインターネットや株式市場、経済動向などに多少興味を持っていないと面白くはないかもしれないけど・・・。


やや不満だったのは、主人公達が仕掛けた作品の一連の流れの動機が「えっ、本当にそれだけなの?」って思うくらい浅いものだったし、いくらなんでもそんなにうまくはいかないだろう、って思う。伏線をたくさんしいたり、ストーリーとしては壮大なのに、締めがいまいち、というか結構弱かったのはう〜ん、と思ってしまった。賞の評価員も書評にも書かれていたけどね。


でも近未来の出来事を書いているけどあながちまったく的外れではないと思った。もしかしたら遠くないうちに本の中の世界も作られそうな気がする。セキュリティ技術が完璧じゃないと実現しないとは書いてあったが・・・。
インターネット化した世界ではセキュリティ問題っていうのは解消されないんだろうな。でもネットバンキングも流行してきた昨今、もっと大きな経済取引が電子上で実現する日も遠くない気がする。


評価6.5(サッカー風で言う10点満点 平均点6点)