「ウェブ進化論」 著者 梅田望夫

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)


Webの世界で起こっている出来事・変化について、Web2.0の概念を中心に分析・考察と、Webによる世界の変革の予想をした内容。


最近話題に上ることが多い「Google」であったり、ブログやSNS、オープンソースなどについて記載しているが、まず一言、これを読むと非常にワクワクする。現実世界のほかにもうひとつの世界が出来上がりつつあるのを感じる。物理的なもの以外はかなり提供されつつあるのではないだろうか??


ブログやSNS、Wikiなどで、個人が簡単に情報を発信することが出来るようになってきた。またGoogleの検索の技術や、情報を自動で集めてくるGoogle Newsのようなサービスも出てきており、いろんな情報をいろんな角度から見るようになってきた。既存のメディアにとっては脅威であろうが、一般市民にとってはありがたい傾向。既存のメディアの報道はどうしてもメディアのフィルタがかかってしまう。もちろんWebの意見もメディア以上のフィルタがかかっているだろうが、メディアを圧倒的にしのぐ情報ソースがある。
しかし逆に言えば情報の洪水状態が起きていること。この膨大な情報の中から何が本当に重要なのか、情報収集はもちろんだが、情報を取捨選択して適切な理解をする能力が重要になってくるだろう。


またロングテール現象によって、資本の小さいもの・日の目を見ていなかったものも再び表舞台に登場するきっかけとなることが出来た。これによって良い情報を持つもの、良いノウハウを持つもの、良いアイディアをもつものが簡単に情報発信することが出来て、それを広めることも低コストで出来る。それによって起業家などがたくさん出てくるようになったが、ブルーオーシャン戦略を取れるきっかけになるだろう。またより個人の能力が重要になってくる。磨きをかけ続けないといけない。


気になったのは、ネットの「こちら側の世界」、つまり今まで現実世界でのビジネスの状態を軽視しているように感じた点。たしかに「Google」のように大爆発はしない可能性が高いし、今までの企業も新しい考え方を取り入れて進めていく必要があるが、先に述べたようにネットのあちら側の世界では「物理的」なサービスは提供しない。Amazonが成功しているのも、ほぼ完璧な物流の仕組みを整えているから。人が生きていくためには日々食事を取らなければいけないから、農業は必須であるし、またネットの世界を構築するには巨大な、かつ高速なインフラが必要になってくる。インフラの整備の負担は果たして誰が責任者となるのか?アメリカではインフラ会社がGoogleに対してインフラ構築のための投資を求めたとか求めない、とかの話があるが、現実世界に関わる数々の問題も解決していかなければいけない。


しかしどちらにしろ、Webはプライベート・ビジネス共に欠かせないものになったのは事実。使いこなすだけでなく、スピードも圧倒的に速くなっているので、アンテナを張っておいてアイディアを取得し、すぐに行動を起こせるような体制や姿勢を作っていくことが大事。何となくそんなことを言っているのではないかな〜と思った。
現在ネットの世界で起こっている出来事を把握するためにもぜひ読んでおいたほうが良い1冊だと思う。

評価 7.5(サッカー風で言う10点満点 平均点6点)