「小説 太平洋戦争」 著者 山岡 荘八


小説太平洋戦争(1) (山岡荘八歴史文庫) 講談社


全9巻に渡り、太平洋戦争を描いた本。戦前の諸外国との外交交渉から戦後の東京裁判まで、著者が従軍記者として、また戦後はかつての将校や戦没した将校の家族を訪問して取材した体験話。


歴史の授業では到底習わないような中身の濃い太平洋戦争物語。物語というか史実なんだが。戦後60年経過したため、戦争を語れる人は少なくなってきた。しかし正直この戦争は忘れてはいけないし、きちんと理解しないと昨今の対アジア外交問題でもめている背景もつかみにくいだろう。


もちろん昭和天皇であったり、当時の思い入れのある政治家を擁護するような見方もあるのは事実で、全てが客観的な真実ではないと思うが、取材という形態をとっている以上限りなく真実に近い、と思う。
歴史や一般常識では東条英機といえば完全にこの戦争における犯罪者で、東条さえ権力を握らなければ起きなかった、のような風潮があふれているが、彼らも外部からの「戦争をしたい!」という流れに抵抗できずに踏み切ってしまった悲劇の人でもある、という一面は忘れ去られている。誰が戦争を起こしたかったか?それはABCD包囲網を敷設し、戦争後に超大国となったかの国しかあるまい。そしてABCDのCも。


もちろん日本の戦争における対アジア戦略が良かった、ということはさらさらない。東条だけでなく当時の軍部の上層は戦争におけるもっとも大事な要素「情報」の取得をおざなりにしていたことによる悲劇であった。それによりアジア国民に対しても悲劇を起こしてしまったし、南方戦線における日本人の必要以上の犠牲を強いられた。その意味では軍部がもっと「常識的な」軍人であったのならお互いの被害は避けられたのではないか!?

隣の中韓に対してもひどいことをしたのは認めるが、あまりにも一方的な見方だと思うのはうえの理由だ。また昭和20年の8月によるソ連進行による日本人虐殺および大量捕虜という悲劇も味わっている。しかし内面はどうであれロシアに対する日本の態度は隣国に比べると大人の対応が出来ているのではないだろうか・・・。


確かに敗戦した、負け犬根性があるのは認めるが、いたずらに卑下するのではなくしっかりと事実を見据えて、諸外国とコミュニケーションをしていく必要があると思う。
戦後世代はぜひ本書を読んで欲しい。

評価 8.5 (サッカー風で言う10点満点。平均点は6点)

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