「東北アジア共同体に向けて 〜日本とアジアの共生〜」 講師 姜 尚中


<夕学五十講>
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慶應丸の内シティキャンパス定例講演会「第17回」に参加した。東北アジア地域の平和と発展のために、東北アジア地域の共生のためのアジア外交・日米外交・6者協議などできちんと日本のビジョンを描いていかなければならない。そして対中国・対北朝鮮などの外交方針を定め、地域共生を図っていく、という内容。


近年、領土問題やエネルギー問題・靖国問題拉致問題など、対アジア、特に東アジアの外交がうまくいっていないことは周知の通りである。小泉首相アメリカ寄りの姿勢もあり、日米関係は非常に良好、欧州との関係もそれほど悪くないと思うのだが、どうも近隣諸国とはうまくいっていない。


今日の姜先生の話を聞くと、外交問題が非常に山積みで、しかも先の見通しもあまりよくないのでは、と感じてしまった。核や拉致などで様々な問題がある北朝鮮も建国の文化が旧東側と違い、抗日を主眼とした自立的な立国であったため、体制変更があるとは思えないし、体制変更したほうが中韓を巻き込んで混乱をもたらす、なので各国とも体制変更は望んでいない、と聞いて、あの体制は残ってしまうんだ、とがっかりしてしまった。

アメリカのイラクのような政策も検討したらしいが、起伏に富み、堅い岩盤を豊富に持つ北朝鮮を占領することが非常に困難で、北朝鮮からソウルへの反撃など、経済的なリスクも大きすぎるので非現実的との事。まあ隣で戦争が起こる可能性が低いのはありがたいことだが。


しかし東アジア地域での安全保障を考えると朝鮮半島の非核化は必須だ、と講演されていた。そして昨年9月の共同声明も大きな一歩を踏み出したといえる、との事。しかしその後のロードマップがないので、交渉を根気良く続けていく必要があるが、交渉を進めていくためには、プルトニウム問題などでまず北朝鮮がだいぶ譲歩を示さなければ進まない、という主張であった。

たしかに現在の北朝鮮の経済は悲劇としかいいようがなく、経済制裁の発動防止だけでなく、米国との関係改善や韓国との平和条約締結などで経済の呼び込みを行いたいのであろうが、核問題で果たして北朝鮮が先に譲歩してくれるのか、というと非常に疑わしいと思う。


東アジアの安定には外交が必須で、6者協議の連携も大切だというが、それにしては日韓・日中など取り巻く関係が悪すぎる。靖国問題が大きな問題で、このまま靖国を強行していくと結果的に孤立してしまいかねない。米中関係も強化していくし、北朝鮮問題を進展させるには中国の存在が絶対的に必要になるなど、中国の外交における存在感はかつてなくあり、日本の重要性は相対的に減少しているように感じる。
経済的にも、アメリカとの関係においても、日中間の改善は必要になるのだが、太平洋戦争の小説を読んだり映画を見たり話を聞いたり、という環境では、あの戦争の象徴である靖国への参拝はやって欲しいと思ってしまう。また人の思想を制限しに来るのは民主国家のやることでもないし。でも現実的にもこのあたりが引きどきというか、譲歩の精神は必要なのか、とも思うが・・・。


どちらにしろ、中韓との経済の依存、米中の接近、安全保障における朝鮮半島の重要性など、日本が生きて国際社会の存在感を発揮するにはこれらの国との良好な関係は欠かせない。明治以降は欧米を重視した外交であったのだが、日本はやはりアジアとの外交を本当に、真剣に考えていかなければいけない、と思う。課題は山積みで解決できる糸口も少なそうなのだが・・・。